その人は“大阪のおじちゃん”と呼ばれていました。
東京の郊外で生まれ育った私にとっては、大阪のおじちゃんは、親戚の集まりにいつも顔を見せる陽気な存在。はじめて生の関西弁を聞いたのは、おじちゃんの口からだったと思います。子どもの扱いが上手くて、話しの最中に突然背広のポケットから「ハイ、食べや!」と美味しいお菓子を差し出してくれる。身振りも声も身体も大きくて子どもたちの人気者でした。
大阪のおじちゃんの突然の訃報。
このところ会う機会も減っていたおじちゃんのことを思い出しながら、新幹線に乗り、お通夜に向かいました。
お通夜の席の通夜ぶるまいはクッキーでした。
そのクッキーを一口食べた瞬間「ああ、この味だ!」と思い出がよみがえってきました。
大阪のおじちゃんが、いつもポケットから差し出してくれた、あの香りと味です。おばちゃんに聞けば、それはおじちゃんの大好物だったそうで。子どもたちと会う機会には、いつもそのクッキーをたくさんポケットに忍ばせてうれしそうに出かけて行ったそうです。
参列した皆がクッキーの包みをとくと、通夜の席はクッキーの甘い香りで包まれました。それは陽気で明るく、子どもたちに優しかった大阪のおじちゃんを偲ぶのにピッタリのお通夜でした。
香りと記憶は密に結びついている、といいます。
潮風のにおいで思い出す夏の日のこと、ゆうげのにおいが呼び覚ます家族のこと。
嗅覚が刺激されることによって、とたんに湧き上がってくる記憶。それは甘い思い出だったり、ほろ苦い思い出だったり。
きっと誰にも、クッキーの甘くどこかなつかしい香りとむすびついた思い出が、心の奥のほうにあるのでは?
クッキーがかもすおいしい香りがあなたの忘れていた思い出を取り戻してくれるかも知れません。だから今日はクッキーひとつ、どうですか。
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