ケーキハウス・ツマガリ:甲陽園のお菓子工房

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ツマガリ社長について

講演内容

「小さくてもキラリと光る店」松宮隆男著「甲陽園」より

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工場はいらない5つの工房でいい

イメージ写真

津曲さんは「工場はいりません。本店の近く、歩いて2分以内のところに5つの工房を持っています」と言う。これは、商品を量産するつもりはないということだ。
工場は、大きな設備でできるだけたくさんの商品を作るためのモノで、分業化社会の中で単品を量産するためには必要なシステムである。しかし“無人工場”に象徴されるように無機質な存在で、そこには、人々に感動を与える一味の違いや、美しさ、楽しさを創造する感性はない。
工房は、職人が道具や小さな機械で、お客様の笑顔を想い浮かべながらつくるから、感動を与える創造や自分なりの感性を演出できる。特に工房店舗は、商品をつくる工房とそれを売る売り場が隣り合わせなので、お客様はつくる人の顔がみえる。
つくる人もお客様の笑顔が見える。

工房にこだわり、量産化をしない津曲さん。数多くつくれなくてもいいという頑固さがいい。

板重ではなくお盆の単位で商品をつくる

板重とは、百個ぐらいの単位で菓子を運ぶために重ねられる箱である。 どんな商売でも、工場から店へ運ぶのは板重単位である。そのぐらいの単位でなければ、能率が悪くて仕方がない。もっと言えば、商売を考えれば前日につくったものを板重に詰めておいて、翌朝早く配達するのが常識である。
しかし津曲さんは、「お盆で運ぶ単位でつくる」と言う。これは、売れる分は売れるペースに合わせてつくるということだ。つまり、長時間の配送や板重単位の運搬を要するような商売はしないということである。
「ご馳走は旅をしない」という言葉かある。津曲さんはそのことをかたくなに守って、お店の裏でつくって表で売る“工房店舗”の形を崩さないのである。

お客様の顔を見て、品物が切れればつくる。その能率の悪さが、美味しさの秘密である。

半地下の店をわざわざ選んで開店した理由

津曲さんは、初めから半地下の店を探したという。一階でなければ繁盛しないというのが、商売人の常識である。それなのになぜ、よりによって半地下の店をさがしたのか。それはお店の前に立つとすぐわかる。九段の階段の下にある店内と工房が、道路からも鳥瞰図のように一望できる。お客様の賑わいも隅から隅まで見え、まるで、二階から舞台を眺める感じである。
「見えない店はないのと同じ」「見えない商品は置かないのと一緒」。私も販促部長をしていた時、やかましく言ったものである。お客様の目線で店づくりや商品陳列をしない店があまりにも多い。たくさん置けば、“豊富感”があると思い込んでいる。数の問題ではない。お客様の目に映る“本当の量感”が大切なのだ。

お客様の賑わいと“本当の量感”を感じさせる半地下の店。その演出はすばらしい。

社長室は四畳半でも、情熱とロマンは千畳敷だ

津曲さんに初めてお会いしたのは、「ツマガリ」の本店の社長室である。机も椅子もない、応接セットがギリギリに置かれた四畳半ぐらいの小さな部屋だった。津曲さんは、「私には机も椅子もありませんわ。この部屋もやがて何かほかのことに使うらしいですわ」と笑顔で明るく話した。
成功して有名になった今日、世間の常識では、立派な社長室を設けるのが普通である。たぶん津曲さんは、店や工房を歩き回っているので、社長室がいらないのだろう。お客様の顔が見えるところに常に身を置きたいのだ。一時間ばかり情熱的に一気にしゃべり続けた津曲さん。声が大きいので四畳半の部屋では耳がいたいぐらいであったが、不思議と嫌味がなく、一言一言に説得力があった。人に共感を与えるのは、“ほんもの”だからであろう。

店や工房を歩き回り、お客様の顔を見る。そんな津曲さんには、広い社長室はいらないのだろう。

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