ケーキハウス・ツマガリ:甲陽園のお菓子工房

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ツマガリ社長について

講演内容

「最後は品質〜ツマガリ、こだわりの経営戦略」国民生活金融公庫 調査月報5月号より

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最高の素材へのこだわり

熱心にお聞きくださった参加者の方々

今、私の店の半分近くは製菓材料を作る工場になっています。原料から徹底的に追求しているからです。原料屋さん任せではなく、原材料は自分で外国まで探しにも行きます。例えばアーモンドならシチリア産、ドライいちじくはトルコ産を使います。いろんな国の最高の素材を使って、製菓材料を極めたら、それを同業他社におすそ分けするのです。

こんなことをするとライバル店に最高の製菓材料がいってしまうかもしれませんが、材料はある程度のロットを仕入れる必要があるのです。小さな会社が、最高の材料を確保しながら経営を成り立たせるための対策と考えています。

材料を加工する機械も大切です。シチリア産アーモンドの味を最大限に引き出すにはどうやってつぶしたらいいのか。思いが強ければ強いほど、方法が見えてきます。中学校しかでていなくても機械の設計ができるのです。

今、当社の製菓材料を欲しがる会社は日本国中にあり、原料屋さんも日参してきます。私が研究して作った発酵バターや生クリームなど、当社の材料は皆さんに喜ばれていますが、最終的には、お客さまのためにどんなおいしいお菓子を作ろうか、ということがその根本にあるのです。

材料の使い方にしても、同様です。例えば、イチゴのパックの中に、カビの生えたイチゴが一つあったとします。家庭ならその一つを捨てて、それ以外は食べるかもしれませんが、当社では全部捨てます。なぜなら、すでに菌が箱の中で繁殖しているかもしれないからです。

「陰徳」という仏教の言葉がありますが、やはり長く続くのは、見えないところで徳を積む、つまりお金をかけた商品です。その商品は、手にしたときに、作った人間の誇りや、商品がもつ尊厳に満ちています。人間が口に出さなくても、商品自身がそこらじゅうに行ってその値打ちを伝えてくれますから、誰もこの商品を離さなくなるのです。例えば、カバンだったら、「このカバンの中を見てみ、すごみがあるやろう。これの値打ちはここやねん」と。

オンリークオリティーが会社を支える

お菓子職人の世界でも、見えないところに力をかける、見えないところにすごみを出す。それがオンリークオリティーになる。トップクオリティーじゃだめです。どこにもまねができない独自のクオリティー、これが個性となって結果的には企業の強さになります。なぜなら、こうした独自のクオリティーをもった商品には「信者」がつくからです。

この信者、つまりお客さまは、自ら営業部長になってくれます。給料を払った営業部長より、買ってくれる営業部長のほうがたよりになる。「この前買ったやつ、あれよかった」と、別の人に伝えてくれるのです。
 当社ではこれを「口伝え戦略」といっていますが、これが一番です。テレビの宣伝でもなく、お客さま。

特に同僚、横にいる人です。一番信頼のおける人間が、「あれいいんだよな」と言ったら、「おれも分けてくれ」となります。「いや、それが手に入らんのや。おれも1年かかったんや」「そこを何とか頼むわ」といった会話から信者が広がっていくのです。「口伝え」の効果は抜群ゆえに、悪い評判もたちまち広がります。ですから、信者であるお客さまの期待を裏切らないためにも、商品には絶えず手を加え、改良を重ねなければなりません。お客さまから「うまい」と言われても慢心せずに、改良を続けるのです。

イメージ写真

そのために、私はいつも販売最前線にいます。店舗には、お客さまの要望や苦情がどんどん飛び込んでくる。それが商品改良や商品開発のヒントになるのです。

店舗の営業報告書には、問題点以外は書かせません。しかも、書くのはアルバイトの店員です。店長はいいことしか書きませんが、アルバイトの店員は、悪いことでも包み隠さず書いてくれるからです。

インターネットメールを通じたお客さまの声にも、開発のヒントがたくさんあります。ご購入いただいた商品について、「以前に比べて、甘い、硬い、口どけが悪い」など、素直な意見がタイムリーに送られてくる。私はこれを徹底的に分析して、すぐに改良を始めます。商品会議なんかいらないのです。例えば、午後2時に苦情がくれば、午後4時にはもう、改良された商品が完成する。「貴重なご意見ありがとうございました。改良いたしましたので、新しい商品を何日の何時ごろにお届けします。」とメールを送れば、お客さまは、その素早い対応に感動され、また商品を買ってくださるのです。

これで利益が出たら、その資金でさらに良い材料を世界中から探して使ってみる。もっといいお菓子を作って「もっと感動させたろ」と思っているからです。利益を商品で返すことで、お客さまとの信頼関係はさらに深まるのです。

こうやって、長い間お客さまに愛してもらえる商品こそ本物の商品です。「今はサイクルが早いから、2年しかもたない」という人がいますが、それは、サイクルのせいじゃない。そんな商品は、初めから2年の値打ちしかないのです。ロングラン商品は、毎日少しずつ、改良され続けている。人間と同じで、商品も新陳代謝が必要で、進化がなかったら、その商品は死んでしまうでしょう。変化ではなく、進化が大切。どんどん殻を破って、進化していくことで、優れた本物の商品になるのです。

私は、絶えず繰り返し同じものを改良して、飽きるほど常に改良して、自分が売る商品に魂を込めてきました。会社を支えてくれるのは、商品です。神様なんかじゃない。経営者が、自分の子供に対する以上の愛情を商品に注げるようになれば、その会社はきっと強くなっていくはずです。

(注)本稿は、2005年2月8日に大阪市で行われた国民生活金融公庫経済講演会での講演要旨です。
国民生活金融公庫のウェブサイト

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